vol.066 森のようちえん クスクス

 
 
みんなちがって、みんないい・・・そう、我が子は我が子。もちろん子育てのペースだって他と違って当たり前・・・。
そう思っているのに、いざ子育ての場になると、みんなと一緒でなければ不安で周りのスピードに合わせることに必死・・・。分かっているのに地に足のついた子育てを実践できなくて悩んでいる方はたくさんいらっしゃると思います。かくいう私も悩める母親の一人。
朗らかで温かい場所でありながら、そんな私に少なからず気づきを与えてくれたのが、「森のようちえんクスクス」です。
今回は代表の井上さん、スタッフの宮田さん他、たくさんのお母さんからお話を伺いました。 
 
◎活動を始めたきっかけは? 
 
今から14年前、1歳の息子を野川公園にときどき連れて行きました。
大きな幹に力づよくつかまりだちをし、大きな空の下、風の中で、葉っぱで遊び、母である私にいろんな表情を見せてくれました。こんなに豊かな気持ちになる子育てに、仲間がいればとてもいいなぁと思い、森のようちえんを始めました。
子どもたちのリズム、季節の移ろい、自然の時間・・・そのゆるやかな流れの中で子育ての一歩をはじめ、そのような考えに共感してくださる方々がつながっていき、今に至ります。
大人も子どもも、外側の情報ではなく、人が本来もつ自然、環境としての自然を感覚的に味わいながら、育みあっています。(代表・井上さん)  
 

 
◎現在はどんな活動をしていますか? 
 
2才~5才児を対象とした少人数(定員15名)での縦割り保育を行っています。
園舎を持たず、四季を通して外で過ごしているため、季節と呼応したあそびが行事のようになっています。(例:芽吹きの会、七夕の竹切り、どんと焼き、節分、巣立ちの会など)
また、親も保育に参加する共同保育を行っています。その中で、自分の子どもだけでなく、共に育つ仲間として子どもたちをみる視点が育まれています。
「朝の会」「おわりの会」では、保育者も子どももそれぞれの話を聴き合うことを大切にしています。
朝の会では、子どもたちが、その日の行先・あそび場を決めることもします。
例えば「音楽の時間」という決められた時間はありませんが、わらべうたや子どもたちに歌い継がれた歌があり、誰かが歌い出せば、歌声が重なったり、木の棒を叩くリズムが加わったり、踊り出す子がいたり、まさに「音を楽しむ」音楽の時間が生まれることもあります。赤ちゃんもスマホで動画を観るような時代だからこそ、目の前の人から伝わるものを受け取り合う時間を大切にしています。
4~5才児は室内での造形や調理活動を定期的に行っています。一日限りではない作品づくりや創作劇に取り組むことで、一人ひとりが普段の外遊びから一歩先へ踏み出す機会となっています。 
また5才児は登山にも行っています。   
他にも、通年で武蔵野公園の田んぼの活動に携わっています。こういった地域の活動は、多世代交流や地元の文化にも触れることのできる貴重な体験の場となっています。また、クスクスには壁も塀も天井もないので、普段から声をかけてもらう機会が多く、地域の方々に温かく見守られて過ごしています。
 

 
◎これからやってみたい事や伝えたいメッセージはありますか? 
 
「でまえクスクス㏌国分寺&小金井」を始めました。
クスクス育ちの中学2年生と年少の二人の子どもがいます。10歳違いなので、この間に幼い子どもやその親を取り巻く環境がとても変わったことを肌で感じています。要因は様々でしょうが、幼い子どもの「そのまんま」の姿を親が知る機会が失われている気がして、それが育児の不安を大きくさせているようにも思えます。
そこで原点回帰。
クスクスが生まれるきっかけとなった親子の時間を紡げるような場を作りたいと思い、大空の下でゆったりと子どもを観察してみたり、相手の親に気兼ねなく子ども同士がふれあい、育み合える場として1年程前から月に2~4回ペースで活動中です。1才半から参加できますので、ぜひ遊びに来て仲間になってほしいです。(スタッフ・宮田さん) 
 

 
◎取材を終えて

暖かい陽気のなか、クスクスの子どもたちに会いに行ってきました。
ちょうど可愛らしい女の子の5才の誕生日。手作りの王冠とマントを纏い、ちょっとはにかんだ主人公のために、みんなで自然のケーキを作ります。こどもたちはキョロキョロ辺りを見回して、刈り取られたふわふわの草をたっぷり集めて丸く積み、ホオノキの実やムクロジ、落ち葉や枝で飾り付け。世界に一つしかない「旬」のケーキが出来上がりました。
ケーキが作られる間、大人たちは子どもたちを優しく見守ります・・・そうなんです、ただ見ているわけではないのです。事の成り行きに注意を払いながら、子どもたちの一挙手一投足に目を向け観察し、一人一人のペースを感じとります。もちろんピリピリと緊張感を持っているわけではありません。自然に、あくまで自然に。 
 
子どもたちを見守るなかで私たちも成長しているんです、クスクスで子育てができることが本当に幸せです、とお母さん方は口々におっしゃいます。 
 
「今まで時間がない、忙しいと思い込んでいましたが、こどもと向き合える時間って案外あるんですよ」
「わざわざ口を出さなくても気配だけでこどもは安心するんです」
「『させなきゃ』なんて思わなくても、時が経てばこどもの内側から素敵なものが現れてくるんです。本当に驚きの連続です。」
「みんなで育てることで生まれる余裕があるのとないのとでは、やっぱり違いますよ。」
お母さんたちとお話をすると、日々のびのびと育つこどもたちを前に、お母さんたちも「自然体」でいられていることがよくわかります。そしてその貴重で素敵な時間がいかに大切かも伝わってきます。 
 
ケーキの材料を巡ってこどもが小競り合いを始めました。
「こんなときにケンカしたら悲しいよ」とたしなめる子、やっぱり悔しくて泣いてしまう子、やりすぎたと反省して「ごめんね」と謝る子・・・。
泣いていた子がお母さんの元に走っていきました。いつも一緒だと最後はお母さんに甘えるのかしら?・・・いやいや「タオルちょうだい!」と言うとお母さんに出してもらったタオルでぎゅっと涙を拭き、何事もなかったかのようにお友だちの元へ戻ります。それぞれの子が着実に着実に力を蓄え育っているなと感じた瞬間でした。 
 
 
 
最近タイパという言葉が流行っています。タイムパフォーマンス・・・。時間対効果の意味で、合理的に効率よく時間を使うことで大きい効果を得ることを主軸とする言葉のようです。
子育てに表面的な『合理性』や『効率』を持ち込むのは個人的に好みませんが、敢えていうなら『合理性』や『効率』なんて微塵も考えず、じっくり腰を据えこどものペースを乱さず自然体で子育てを行った方が、まわりまわって『合理的に』『効率よく』人としてのしっかりとした土台、そして大きな成長をもたらす気がする・・・。
太陽の下、笑い転げているこどもたちを見ながら、そんなことを考えてしまいました。  
 
(2023年11月 Kママ 11歳女児)
 
◆基本データ◆
団体名:森のようちえんクスクス
登園日・保育時間:週4日・9:30〜13:30 (春休み、夏休み、冬休みあり)
※2才児は週1〜2日の保育となります。
活動場所:小金井市内の公園など
問合せ先:ホームページ問合せフォームよりお問合せください
ホームページ:https://kusukusu.jimdofree.com/
ブログ:http://blog.livedoor.jp/mayumic-kusukusu/
FB:https://www.facebook.com/morinoyouchien.kusukusu
Instagram:https://instagram.com/morinoyouchien_kusukusu?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA== 
 

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