農工大の緑に囲まれた静かな空間に、かわいらしい建物があります。前を通る度に、こどもたちと一緒に作ったであろうカラフルでほっこりとした「回帰船保育所」という木製表札が目に留まり、漠然と素敵な保育所だな~と思っていました。
とはいえ中身はどんな保育所か全く知らなかったのですが、ご縁があって取材をさせていただき、子どもに対する思いや考え方に触れ、すっかりファンになってしまいました。
今回は、「回帰船保育所」の岡澤さんにお話を伺いました。
◎活動を始めたきっかけは?
保護者が集まってつくった自主保育のグループが、1974年に保育室になり、小金井市内で移転しながら、50年近く小規模異年齢保育を続けています。
赤ちゃんの頃から服や靴がドロドロになるまで外遊び。とにかく外で遊びまくるので、保護者には「洗濯は大変です!」と入園前に予告しています。(笑)
大きい子は、はらっぱ(武蔵野公園)周辺が主な遊び場で、思いっきり走ったり木登りしたり。そして転んでひざを擦りむいたり、蚊にさされたり。自然と触れ合う中で自分の身体の使い方を学び、遊具がない公園でも遊びをつくりだしています。
また、クラス分けをしない異年齢保育で、小規模(定員27名)なので、子どもひとりひとりの個性が際立ちます。きょうだいのように仲良く過ごし、毎日笑ったり泣いたり、ケンカもしながら元気に育っています。
◎現在はどんな活動をしていますか?
回帰船では、運動会やお遊戯会といった行事は開催していません。学校に行ってからもできることは後回しにして、なるべく大人に強制されることなく、のびのびと自由に過ごす。せっかくの子ども時代を思う存分楽しんでほしいのです。日常の様々な小さな経験すべてが、子どもの芯のところで大きな力になって、この先の人生の手助けをしてくれると信じています。
また、子どもが安心して成長できる、子育てしやすい地域をつくることも、回帰船のミッションのひとつです。回帰船は、子どもと大人にとって家族以外の多様な出会いの場でもあるので、今年はバザー等のイベントも再開して、地域の方たちとも交流したいと思っています。
「回帰船の子どもはいいな~!もしかして世界一幸せなんじゃない!?」と、わたしたち保育者がうらやましくなるほど、本当に楽しそうな瞬間があります。保育者は責任が重く大変なこともありますが、子どもたちとの日々は充実していて、かけがえのない場面に立ち会える仕事。子育てはもちろんですが、保育所に対する支援と、保育者が働きやすい環境づくりが早急に必要だと実感しています。
◎これからやってみたいことや、伝えたいメッセージはありますか?
小さな子どもたちがどんな場所で、どんな時間を過ごすのか。保護者の方には、いろいろ見学に行って、よく考えて選んでほしいです。回帰船では随時見学等、受け付けています。興味がある方は、ぜひご連絡くださいね!
◎取材を終えて
子どもは「今」を生きていて、大人は「先」を生きている、と聞いたことがあります。子どもの頃は「今」が楽しければそれだけで大笑い。でも、大人になるとどうしても「先」を考えるから、「今」が楽しくても「先」が不安だと笑えない・・・
確かにそうだと思います。
子どもたちは、子どもたちの「今」を笑顔で見守ってくれる大人に囲まれて、明日のことも明後日のことも、ましてや一年先のことなど全く考えず、「今」をゲラゲラ笑って楽しく、そして一生懸命に過ごせたらどんなに幸せでしょう。それが生きていく力に繋がるのなら、なおさら「今」を大事に過ごしたいものです。そして回帰船保育所は、子どもたちのそんなかけがえのない時間を本当に本当に大切にしている保育所だと思います。
取材するにあたり、旧のびのびーのサイトに掲載されていた「小金井こども支援活動史」を読みましたが、感動以外のなにものでもなく・・・。
>こども支援活動史はこちらから
親は往々にして将来はその子が作るものだということを忘れて、将来を用意してしまおうとするものです。今だけ、今でないとできない、地に足のついた経験を取り上げて、大人の価値観に倣った経験を与えようとしがち・・・。自分が産み育てている子どもですもの、とても大切ですし必要以上に心配してしまうものですよね。
ですが、この保育所と共にそんな不安を笑い飛ばし、こどもの力をただただ信じ、ひたすら見守る。親としてそんな時間をこどもと共有できたなら、本当に素敵だろうなと思いました。
(2023年2月 Kママ 10歳女児)
基本データ
団体名 回帰船保育所
住所 小金井市中町2-24-16 東京農工大学小金井キャンパス内
問合せ先 電話:042-384-1839 メール:kaikisen@hyper.ocn.ne.jp
ホームページ https://kaikisen.link/