書は人をなす、といわれると身も蓋もない・・。
私の字は(きっと根性に比例して)いつもどこか曲がっています。とはいえ、丁寧に書いたら書いたなりの形になる気もしますし、その時々の感情や調子も字に少なからず表れてしまう気もしますし、はからずもうまく書けるとやはり嬉しくなります。
普段何気なく字を書いていますが、突き詰めていくと、書くって奥が深いのだろうなと思わずにはいられません。
そんな書く行為=「書」を子どもたちと楽しむ会が小金井にあります。
今回は、『いろは書道会』の代表、髙原さんにお話を伺いました。
◎活動を始めたきっかけは?
一番は、「わたしたち書くことが好きなのだけど、みんなも一緒にしない?」
という軽めなところだと思います。(笑)
わたしたちの思いとは裏腹に、筆を使って墨で字を書くという、少し敬遠されてしまいがちなお習字・書道です。
小学三年生からは学校でも授業として取り入れられていますが、近年はその時間も少ないようです。
書道に限らず、はじめての体験、苦手だと思っていること、それが楽しければきっと夢中になる。そしてその先では、もしかしたら得意なことになっていくかもしれない。
「パソコンやメールが主流になっても、書くということを好きでいてほしい。」
堅苦しい書道ではなく、楽しい時間を一緒に過ごせたらと思っています。
◎現在はどんな活動をしていますか?
・書道教室(いろは書道教室、書道サークルてならい、ちいさな書道部)
・書道体験教室
・単発イベント『イロハコ』
・墨や和紙であそぶワークショップ
◎これからやってみたいことや、伝えたいメッセージはありますか?
今後、私が主催する『ちいさな書道部』では、主な活動時間を放課後だけでなく、学校の教室以外に行ける部屋として、週に一度平日の午前中に活動したいと考えています。
『いろは書道会』としては、こどもたちがただ書に触れるだけでなく、仲間の書や書き方を見て学んだり、洗濯で落ちる液ではなく、便利な墨汁でもなく、硯で墨をするという過程を経験し、その音や硯の中で墨ができていく感触、墨の香りや墨の濃淡など、味覚以外の感覚を満たし楽しんでもらえたらと思っています。
ワークショップではそんな体験を取り入れて、もっとたくさんのワクワクをわたしたちも一緒に共有したいです。そのワクワクを感じてもらうためにはどんなことができるだろうと、保育園や幼稚園でのイベントや月一回の単発イベント『イロハコ』など、試行錯誤中です。
◎取材を終えて
娘が幼稚園年中の時に、ご縁があって『いろは書道会』のイベントに参加したことがあります。
娘にとっては初めての墨と筆。好きな字を書いていいよと渡された色紙に、娘は大きく「金」と書きました。
なぜ「金」?と思ったのですが、よくよく話を聞くと、自分が知っている文字の中で一番難しいものにチャレンジしたとのこと。
こんな字だったかな?という迷いと頑張りが合わさった、娘渾身の書です。今でも我が家のリビングに飾ってあるのですが、見るたび得意満面に色紙を掲げた娘の姿が思い出されます。
やっぱり、書くって素敵な表現方法ですよね。とはいえ、やみくもに表現だけしても納得のいく境地にはたどり着けないもの。「学び」あってこその表現であることは否めません。
いろは書道会さんの「学び」をないがしろにせず、でも堅苦しい学びではなく、子どもの目線に立ち、まず書くことの楽しさを自ら学び取るところから始める、そんなスタンスが印象に残りました。
子どもが新しいことにチャレンジして、書くことを心の底から楽しんで、書くことがどんどん好きになって、そして美文字がついてくる・・。
担任の先生の美文字と自分の曲がった文字が並ぶ小学校の連絡帳を見ながら、やっぱり字は上手に書けるに越したことはないな・・なんて思ってしまうのです。
(2022年9月 Kママ 10歳女児)
【基本データ】
団体名 いろは書道会
問合せ先 koganeishodo@gmail.com
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