小金井市に、「子どもの権利に関する条例」があることを知っていますか。
子どもが大人と同じ権利を持つ主体であると捉え、自分らしく生きる権利や意見を表明する権利など、具体的な権利について子どもにも分かりやすく書かれています。
この条例は、1989年に国連で採択された、「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」を土台に作られたものです。(日本は1994年に批准)
子どもの権利に関する条例が、自治体独自のものとして制定されていることは決して当たり前のことではありません。
日本全国見渡してみても、独自の条例としてある自治体の方が少数派なのです。
そんな貴重な条例を制定するに至るまでに大きな役割を果たした市民団体が、現在の「いかそう!子どもの権利条例の会」です。
制定後も、名ばかりの条例にならないように常に見守り、市へ働きかけたり、市民への広報にも取り組んでいます。
今回は、そのメンバーのお一人である阿部さんにお話を伺いました。
◎活動を始めたきっかけはなんですか?
2004年小金井市に子どもの権利条例を作ろうと、「つくろう!子どもの権利条例の会」として市民グループを発足。
当時この条例は策定委員会、子ども会議、市民会議などの議論を経て成立を待っていた状況でしたが棚上げ状態となっており、会の陳情等を経て、ようやく2009年3月、「小金井市子どもの権利に関する条例」が全会一致で市議会で可決されたことを機に、会の名称を「いかそう!子どもの権利条例の会」に変更して今に至ります。
◎今、やっていることはどんなことですか?
2018年11月に、子どもの最善の利益を保障する「子どもオンブズパーソン」」(※公正・中立な立場で子どもの人権擁護・救済をする公的第三者機関)の設置と、条例の推進計画の策定及びその検証を求める、2本の陳情を小金井市議会に提出し、陳情は共に賛成多数で可決されました。
現在は子どもオンブズパーソンが2022年度に設置される予定のため、今年(2020年)の1月26日に学習会(講師:吉永省三さん(千里金蘭大学教授)を開催し、地域市民と共に子どもの権利条例に即した子どもオンブズパーソンとは何かについて学んでいます。
今後は、市の担当部局と共に市民参加でオンブズパーソンの設置に関われるよう働きかける予定です。
また、市の公民館主催の「子どもの人権講座」の市民準備会にも参加しており、10年以上講座の企画に関わっています。
(毎年、市と市民の協同で開催。写真は2016年と2019年のチラシ)
◎これからやっていきたいこと、伝えたいメッセージはありますか?
「小金井市 子どもに関する権利条例」は、施行されて昨年(2019年)10周年を迎えました。本来、市の担当部署である子ども家庭部児童青少年課が、条例を広く市民、特に当事者である子どもに伝える責務があると思います。
しかし、毎年条例を記載したリーフレットをただ学校経由で配布するのみで、条例の存在や内容の認知度は低いままです。
しかし、ここ何年もの間、子どもの権利を侵害する痛ましい事件が数多く起きています。
社会全体の早い動きがおとなを追い詰め、結果、子どもへの権利侵害に繋がっているケースも少なくはないでしょう。コロナ禍で今後、益々このようなことが増えるのではないかと懸念しています。
私たちにできることとして、まず、権利の主体者である子どもたちに子どもの権利のことを知ってもらいたい、そのために、まずは保護者に知ってもらうことがキーポイントになるのではと思っています。
具体的には、市内の子ども子育て関連のイベントへの参加、横のつながりで子どもの権利をベースに活動している、もしくは子どもの権利に共感してくれる市民グループと合同で学習会、子どもの権利の啓蒙活動等を行いたいです。
また、2018年11月に会が出した子どもの権利条例についての陳情2件が採択されたことを受けて、子どもオンブズパーソンが2022年度に設置されることが決まっています。
市が制度設計をしますが、当会も常に市の動きを確認し、会の意見・要望が反映されるように働きかけをしていかなくてはなりません。
オンブズパーソンのことを知らない市民も沢山います。更に認知度をあげるための活動もしなくてはいけないと思っています。
◎取材を終えて
私が小金井市の子どもの権利条例について知ったのは、第一子が2歳になった頃、「子どもの人権講座」に参加したことがきっかけでした。
初めてその条例の存在を知った時は、あまり深く考えることなく、小金井市で子育てできてラッキーだなと感じました。独自の条例があるイコール、子どもを大切に思う大人が多いってことだと思ったからです。
でも、その後も子どもの人権について興味を持ち続ける中で、条例があるだけではだめなのだと言うこともだんだん理解できるようになりました。
「いかそう!子どもの権利条例の会」の皆さんの多くは、この会だけでなく、子どもの権利の具現化をめざし、地域の様々なフィールドで活動し、子育て世代を応援してくれています。
「子どもの権利」と聞くと何となく難しそうだけれど、実際はそんなに難しいことではなく、子育ての基本にある考え方なんだよ、ということを様々な活動を通して教え続けてくれているようです。
市への提言や、オンブズパーソン設置への働きかけなどからは、子どもたちに対する深い愛情も感じます。
条例を形骸化させるのではなく、小金井の子どもたちの未来のために絶対に活かしていくんだという皆さんの強い想いを今回の取材を通じて改めて感じました。
このコロナ禍で、子どもと家庭で過ごす時間が増え、つい感情的に声を荒げたりイライラしている我が身を振り返りちょっと反省・・。
子育ての原点とも言える「子どもの権利」を忘れることなく、時には立ち返って我が子と日々向き合っていこうと思います。
【基本情報】
団体名:「いかそう!子どもの権利条例の会」
開催日:不定期
問合せ先:kdmkenri@gmail.com
FB:https://www.facebook.com/koganei.kodomokenri/