「子どもを性被害から守る~私たちおとながすべきこと~」

 
犯罪被害者週間行事の一つとして、昨年11月末に宮地楽器ホールで講演会が開催されました。
タイトルは、「子どもを性被害から守る~私たちおとながすべきこと~」。
娘をもつ一人の母として気になるテーマだったので、足を運んできました。 
 
講師の小笠原氏は元警察官。性犯罪の加害者から聞き取った話や、犯罪の具体的事例を挙げての説明等、かなり聞き応えのある内容でした。性の話は何となくタブー視され、表面的な話で終わることも多い中、一歩踏み込んだ具体的なお話でした。 
 
まずは性暴力とは何か、何をもって性暴力とするのか。性犯罪に対処するための刑法の説明がありました。
子どもを対象とした性的行為はイコール性暴力となりますが、日本ではそれが13歳未満。諸外国ではもう少し年齢が高く、このままで良いのか課題があるそうです。
また、18歳未満に対する監護者(保護者)からの性的行為は、暴行や脅迫がなくとも犯罪となるそうです。これは4年前の刑法改正で新設されたばかり。その背後には、監護者という立場を利用して、子どもたちを追い詰める卑怯な犯罪があるということが垣間見えます。
性犯罪の被害者が加害者とどういう関係性であったか調査した統計によると、全く知らない人という回答は1割だけ。9割の被害は交際相手や親族などの知人なのだそうです。特に子どもの場合は、親や習い事の指導者、教師、学校の先輩といった上下関係のある間柄であることも注目されます。 
 
信じがたいことですが、血縁関係のある実の子どもに性暴力を強いる親もいるそうです。家庭という逃れられない関係性の中で、「体にいいことだから。」「どこの家でもやっていること」などと言いくるめられて何年も辛い思いをしてきた子がいる、と聞いただけで胸が苦しくてたまらなくなりました。 
 
講師のお話はどれも心に刻み付けたい内容ばかりでしたが、その中で何よりも私の記憶に残ったのは、講演会冒頭に行ったアイスブレイク。
コロナ対策で間隔を空けての着席でしたが、近くに座った人と軽く挨拶の後、今から出すテーマで数分話してください、というもの。
そのテーマが衝撃的・・。 
 
「自分の初体験について、事細かに語ってください。」 
 
え?冗談ですよね、先生!?と、至極真面目にどんどん話を進める講師の言葉に、私の頭の中は若干パニックに。よりにもよって私のお近くの席は初老の男性。いやいやいや・・無理でしょう・・。
暫く後に、「語っていただかなくて結構です。」と種明かしをしてくれるまで、私の頭の中は大混乱でした。 
 
小笠原氏は、このアイスブレイクの意義を、性暴力被害を打ち明けることがどれほど困難なことか分かってもらうため、と語りましたが、ものすごーく!それがよく分かりました。
どんな体験であったにせよ、自分の性体験を人に語るのは、ハードルがとても高いことです。 
ましてや、自分の意思に反して行われた暴力的なものであればなおのこと。 
でも性暴力の被害者は、いつ、どこで、どんな状況で、どのように・・。その詳細を初対面の警察関係者に話す必要があるのです。さらには医療機関で、身体や衣服に残った証拠の採取も重要だとか。
思い出すだけで恐怖心や羞恥心が蘇えるものだとしても、話さなければならない計り知れない辛さを思う時、そんな想いを絶対に我が子にさせたくないと心から痛感しました。 
 
そのためには、どうすればいいのか?
まずは、子どもたちに自分の身体の大切な場所を知ること、そしてその大切な場所はたとえ家族であったとしても簡単に触れてはならないということをしっかり伝えていくことが大切だそうです。
そして大切な場所を誰かに触られそうになってしまったら、「NO!GO!TELL!」。
大声ではっきり嫌と言う、とにかく走って逃げる、誰かに相談する。この3つをしっかり伝えておくと良いそうです。
それでも、万が一被害にあってしまった時・・。そんな時は、「どんな理由があってもどんな状況であったとしてもあなたは悪くない。」と伝え寄り添っていくことで、心の傷がゆっくり回復に向かっていけるそうです。 
 
講演会では、小さな子どもたちにも分かりやすい絵本、「おしえて!くもくん」を紹介してくれました。自分の身体の大切な場所はプライベートゾーンで、その場所は例えふざけていただけだとしても触れたり、人の目にわざと晒してはいけないということが、物語の中で分かりやすく書かれています。
私も購入して、7歳と4歳の我が子に読んでみましたが、興味を持つ内容であったようで何度か繰り返し読んでとせがまれました。 
 
小さい子どもたちに、性について話すのはまだ早い、と思っている方も多いと思いますが、私はむしろ早い方がすんなり理解してくれるような気がします。
なんとなく語るのが気恥ずかしいかもしれないけれど、性を語ることは命を語ることでもあります。そして自分の身体や、周りの人の身体を慈しむ気持ちもきっと芽生えるのではないかと思います。 
まだまだ勉強不足だけれど、この講演会で学んだことはとても大きかったと思います。学校の性教育だけでは限度があると思うので、家庭の中からも子どもたちに伝えられることをどんどん伝えていきたいと改めて思いました。
 
ちなみに、小金井市の公民館で毎年開催されている「子どもの人権講座」においても、性教育はほぼ毎回にわたって取り上げられるホットなテーマです。私が性教育に興味を持ったきっかけのおすすめの講座でもありますので、今年の開催情報をチェックしてみてくださいね。
 
 
>過去の小金井市の子どもの人権講座についてはこちらから  
>「おしえて!くもくん」絵本のプロジェクトはこちらから
 
(2022年1月 Eママ)
 

カテゴリー: