野草の天ぷら、野草ピザ。野川の自然を食べてみた

(2023年4月再掲) 
 
春、野川は豊かな食材にあふれる。
そう、食材だ。
少し、ご近所にアンテナを立てると、どこからか発信される「野草の天ぷら」の集まり、「草団子を作る」集い。胸を躍らせ、食い意地を限界まで張らせて、さぁ飛び出そう、野川へ。 
 
野川は、小金井市内を横断している。どこに行けば、食材となる野草(雑草という名前の草はない!)が摘めるのだろうか。答えは、「ほぼ全域」だ。 
3月中旬、ツクシが土手に顔を出す。絵本の中で見慣れた姿は、一目でツクシと分かる。子どもが喜んで、
「今夜は天ぷらね!」
と、採り始める。お願い、そんな大声で叫ばないで。夕食の食材を野川で調達していることは、吹聴しないでほしいの。
けれど、子どもたちはツクシの天ぷらが大好きだ。実際は、ちょっと苦味があるけれど、その視覚的な可愛さだけで食べられるのが、(うちの)子どもの味覚だ。
ツクシを調理する時は、ハカマ(節を包む、バルーンパンツのような部分)を取り外す。ちょっと面倒くさいけれど、これが美味しく食べるカギだ。
大きく育ったツクシの近くに、生えたて新鮮なスギナの新芽。新芽のスギナは天ぷらにすると、ほのかに抹茶を感じる味がする。大きく硬くなったスギナの葉は、スギナ茶へどうぞ。  (つくしの入った野草の天ぷら。いただきまーす!)
 
再び土手を見渡す前に、山野草を摘むときの絶対的ルールを確認したい。
1.確実に分かるものだけを食べる。自信がない野草には手を出さない。
2.根こそぎ摘んでいかない! 来年以降のためにも、ちゃんと繁殖させよう。
 
1は分かりやすい。間違って、姿が似た毒草を食べてしまっては大事件だ。春になると、時々テレビのニュースで誤食事件を見かけるので、仮に誤食したら、有名人になれるかもしれない。不名誉な意味で。
2も、絶対的ルールだと心して欲しい。山野草も植物なので、光合成で育つ。葉っぱを全て奪われ去ったら、枯れるしかない。この悲劇はタラノキでよく聞く。「タラの芽を見つけたー!」と張り切りすぎて、全て取り去った結果、新芽を出せなかったタラノキが枯れてしまうのだ。
摘む時はほんの一部を頂き、残りは他のみんなの楽しみと、来年の自分の楽しみのためにしっかり育ってもらおう。 
 
さて、改めて土手を見渡すと、黄色い花が鮮やかだ。子どもたちは、目を輝かせて叫ぶ。
「タンポポ大好き!」
 もちろん食用として。だって、美味しいんだもん。タンポポの黄色い花は、天ぷらにすると、ほのかに甘くて絶品だ。私は作ったことはないが、根っこからは、タンポポコーヒーも作れるはず。庭に植えたいくらい優秀だ。
生えたての柔らかい葉は、サラダでも食べられる。サラダで食べるときは、よく洗おう。余裕があれば、犬のお散歩ルートからは、少し外れた葉っぱを狙いたい。
タンポポを探して歩く足元には、オオバコだ。子どもの頃・・・いや、今も子どもに付き合わされて、草相撲をするオオバコだ。オオバコの若葉もサラダで食べられる。オオバコは、踏まれても踏まれても、なお育つ、たくましい野草だ。おかげで、みんなが踏みつける場所に、オオバコが見つかりやすい。逆に、誰にも踏まれてないオオバコを探すのは、案外難しい。穴場があったら教えて下さい。  
 
  (左:たんぽぽ、右:ハルジオンも野草好きには人気がある)  
 
足元をよくよく見ると、お待たせしました、野草の王様、ハーブの女王、称号同士で結婚できちゃうヨモギの登場だ。ヨモギは夏近くまで長期間採れるので焦ることはない。てっぺんの先っぽの新芽だけを贅沢に摘んでいこう。天ぷらにしても美味しいし、定番のよもぎ白玉なら小さい子どもも一緒に形作りを楽しめる。
ただ、ニセヨモギには要注意。葉っぱの形が似た毒草のあるのがヨモギだ。見分けポイントの第一は、葉っぱを揉んだ時に草餅のようなヨモギのいい香りがすること。第二は、葉っぱの裏一面に白い産毛が生えていること。この白い毛から、なんと、お灸に使われるモグサが作られる。
自分で見分ける自信のない初心者にとって安全確実なのは、経験者に聞くことだろう。冒頭に書いた通り、ちょっと地域情報にアンテナを立てると、のびのびーのでも紹介している、NPOこがねい子ども遊パークさんをはじめとして、何カ所かで野草を食べるイベントが開催されている。
匿名でこの記事を書いている私も、コッソリと地味に、そんな会を開いている。 
 
野川には、他にも野草がいっぱいだ。 
せり、なずな、ゴギョウ、はこべら・・全部野川で見つけている。なずなとは、言わずと知れたペンペン草だし、ゴギョウは別名ハハコグサで、知名度は低いけれども植物はよく見かける。
ホトケノザだけは、要注意。春の七草でいわれるホトケノザと、街の雑草として見かけるホトケノザは完全に別物なので、うかつに食べないようにしよう。 

野草をいっぱい入手して、ホクホクと帰宅したところで、ボーボーの庭を見た子どもが言った。
「庭の方が、食べられる草を探すのが簡単だったね・・・」
そう、これは雑草じゃなくて食材なの。春に収穫できる作物なのよ。と、庭の手入れを怠る言い訳もバッチリだ。
そんな、手抜きを愛する育児中主婦が、夕ご飯に作ると決めた天ぷらは、野草調理における万能選手。野草の多くはあく抜きが必要になるが、天ぷらはあく抜き不要の簡単調理方法なのだ。野草ピザも、子ども人気が高い一品。子どもたちの芸術センスが炸裂する。
 
さぁ、みんな。財布を捨てよ、川へ出よう。 
 
2022年5月 遊びしか頑張らない育児中ママA
 
   (春の野草満載のピザ作り♪彩り鮮やかで綺麗!)  

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