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映画「みんなの学校」の自主上映会が全国的なムーブメントとなっています。観た人が自分の街で次の上映会を催し、新たな観客が生まれ続けているのです。小金井では上映後半年たった今も、観た人が語りあい学びあう姿がありました。子どもたちと学校が、映画になって、人と地域をつなぎます。

文=崖乃上ぽにょ
構成=のびのびーの!編集チーム

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小金井市で4人のお子さんを育てるお母さんがいます。崖乃上ぽにょさん。赤ちゃんから小学生までを10年間、年中無休で育て続けています。暮れの押し迫ったある日、「第2回インクルーシブ教育ってなあに?」という講座が目にとまりました。会場は小金井市公民館。主催は「みんなの学校」小金井上映実行委員会とありました。

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--------崖乃上さん「どうすれば自分の思い通りに子どもたちの言動が変わるのか。私は毎日毎日、本気で悩む母親でした。毎日のように夜中に反省するのですが、翌日同じことで怒ってしまい、負のスパイラルに悲しくなるのです。」
 
崖乃上さんはちょうど1年前に、ある講演会に参加したとき、さまざまな事情で明日会えないかもしれない親子の話を聞きました。「明日後悔しないように、今日の子どもたちとの時間を大切にして、思いっきり愛して下さい。」
 
--------崖乃上さん「子どもたちの将来のためだと思っていた私にとって、とても考えさせられる言葉でした。なぜなら、お話を聞きながら、子どもたちの笑顔より、悲しい顔やイライラした顔や泣いている顔ばかり浮かんできたからです。」

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崖乃上さんはこれまでも、小金井市や学校の主催する講座に多く参加しています。学ぶとき、いつも気がかりなことがありました。小学生、園児、未就園児、乳幼児の4人の子どもの居場所です。小学生だけは夫に預けられそうでしたが、あとの3人の居場所をどうするか。
 
朝、小学生と園児を送り出した崖乃上さんは、チラシをテーブルに置きます。未就園児に絵本を差し出し、赤ちゃんをあやしながら、電話をかけました。託児の定員2人分の空きがあるかを尋ね、赤ちゃんと一緒に受講できるのかを尋ねます。定員に空きがありました。これなら子どもたち全員の居場所が2時間分、確保できそうです。映画「みんなの学校」は観たことがありませんでしたが、この講座に行ってみることにしました。
 
映画「みんなの学校」(2014日本)とは?--------
大阪の公立小学校での教師と親と子どもたちの教育実践を描いたドキュメンタリー。2015年2月21日から東京・渋谷の映画館ユーロスペースを皮切りに全国49カ所で劇場公開し、新聞雑誌各紙に掲載されるなど話題を呼んだ。だが注目したいのはその後の流れ。「この映画の自主上映会を開いてみませんか」。配給元の合同会社東風(東京都新宿区)のこの呼びかけに、観客が応じた。

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「市民がつくる自主講座 小金井で『みんなの学校』をつくっていくには?」は全3回。2016年1月30日の講師は、インクルーシブ教育の研究者、野口晃菜さんでした。インクルーシブ教育とは、個々の障がいに合わせた、障がい児のための教育だと誤解されがちです。でも、障がいの有無に関わらず、すべての子どもは異なる存在であり、その違いや、違うからこそ感じる「困り」に対応する教育なのだそうです。
 
野口晃菜(のぐち・あきな)さん--------
インクルーシブ教育研究者。筑波大学大学院博士課程(障害科学専攻)。株式会社LITALICO執行委員として多様な子どもたち8000名への教育サービスの質を担保する仕組みを構築。研究会、講演会等で全国を巡る。学校現場に赴きコンサルテーションも行っている。

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--------崖乃上さん「子どもたちそれぞれのできること、できないこと。やりたいこと、やりたくないこと。好きなこと、嫌いなこと。得意、不得意。子どもたちが個々の存在だと、わかっているつもりだし、個々に対応しているつもりでした。いちばんの理解者でいたいと思いつつ、自分の価値観の枠に入れようとしているのが、現実の私でした。」
 
子どもたちの成長で大事なことは、「自己決定」だそうです。どうしたら自分が幸せに過ごせるかを意見できる力を、周囲が育んであげることこそ、その子が自分らしく生きる力になるそうです。子ども自身がやりたいと思える力を伸ばして、支える。崖乃上さんは、それが家庭や学校や地域の大人たちに求められる姿勢ではないかと思っています。
 
また、今年の2016年4月から施行される「障害者差別解消法」では、合理的配慮をしないことこそが差別になるそうです。野口さんは「障害は人にあるのではなく、社会にある」と、話していました。社会が、個々の存在を尊重して受け入れられるように、仕組みを変えていこうとし続けることが大事なのだと。

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--------崖乃上さん「私は、模索する日々を過ごしています。どうやったら子どもたちも自分も、笑顔で暮らせるのか? 野口さんのお話に『自分が幸せでなければ、相手を幸せにすることはできない』とありました。 私の幸せとは子どもたちが幸せでいてくれることのはず、なんてついつい考えてしまいました。子どもたちが最優先といった自己犠牲的考え方ではないとのことでした。」
 
崖乃上さん自身の幸せとは、なんでしょうか。講座のたびに子どもたちの居場所を苦心して算段し、足を運ぶのも一大決心です。それでも学び続ける姿がありました。思えば、育児する親には自己決定できる環境があるでしょうか。育児に社会的な障壁を感じている親がいます。地域が子どもを見守り、子どもと一緒に学べる環境。崖乃上さんが学ぼうと心に決めたとき、この講座が子どもたちの居場所に配慮のある環境だったことが、受講につながりました。

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講座に先立って、地域のデイケア施設で「みんなの学校カフェvol.3」がありました。崖乃上さんは、このカフェにも子どもたちを連れて参加しています。
 
カフェとは?--------
カフェとは、「対話」を持つ集いのこと。「語らい」「集会」を指す。小金井の上映では対話の機会が多い。市民交流センターで3回の上映直後にそれぞれ観客が立ち寄れるカフェを実施。学識関係者を招いて学びを深めた。それから半年間で加えて3回実施し、共生の考え方にもとづいた保育やデイケアの場に参加者が足を運んだ。自分の手で共生社会を実現してきた人々の話に耳を傾けている。

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会場は小金井市内の『地域の寄り合い所 また明日』。「認知症デイサービス」と「保育所」と「寄り合い所」の3つの柱を備えた施設でした。2006年12月に開設してから10年目を迎えます。

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乳幼児を抱いて畳に上がると、『また明日』施設長の森田眞希さんがさっとベビーベッドを運んできてくれました。親戚の家のように居心地がよかったと、崖乃上さんは話します。

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--------崖乃上さん「参加者同士で自己紹介をし、話し合いました。なぜ現代の子どもたちは疲れているのか。子どもたちの自己肯定感はどうしたら高くなるのか。大人はどうすればよいのか。知らない所で、知らない方々が、こんなにも地域の子どもたちのことを考えていると、私は初めて知りました。」
 
会の半ばで、手から手へと、橙色に輝く新鮮なみかんが渡されて、みんな笑顔になりました。小金井市で農業を営む参加者から差し入れがあったのです。

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森田眞希・和道さんご夫妻は、「子どもの居場所」をテーマに『また明日』の日常を話して聞かせてくれました。認知症のお年寄りでも、幼い子どもでも、だれかの役にたち「ありがとう」と言われる暮らしが、ここにはあるそうです。カフェの開催日はお年寄りの通所のない日でしたが、参加者の子どもを家族のように迎える森田さんの姿がありました。核家族化が進み、子育てに孤独感を抱いている親は少なくありません。家族の枠をこえた、地域での子育てが実在するんだなあと、崖乃上さんは感じました。

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『地域の寄り合い所 また明日』を作り上げてきた森田さんは、「みんなの学校」上映にまつわる全国的な動きを、心静かに見守っています。認知症の高齢者、待機児童、働く親、障がい児。社会のエッジにいる人々がともにいたわりながら暮らす共生社会を自分の街で実現しました。人生を懸け、自分の手で取り組んでいる森田さんにとって、インクルーシブとはあたりまえの日常で、いまに始まったことではありません。各地で映画を投影し、教育について語り合えば、日本に共生社会が訪れるのか。
 
森田さんはそれには答えませんでした。実現した共生社会を「フランチャイズ化」とばかりに手早く普及する方法があるのかもわかりません。ただし、みんなの学校小金井上映実行委員会の活動を支え、『また明日』という場を提供することで、小金井の人が施設に足を運ぶ機会となりました。森田さんはそのことに、ゆっくりと頷きました。

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--------森田さん「最近は賃貸物件でもデイケアや保育の用途をうたった物件を見かけるようになりました。富山県で、『また明日』の実践をモデルケースとして展開した事例もありました。けれども、『また明日』の暮らしは、この街のお向かいさんやお隣さんとの関わりあいでこそ実現できたのです。」
 
多世代が同一空間に存在するという活動そのものに対して、共生を実現したと評価されることも多いそうです。しかし、「また明日」の本来の目的は、暮らす人自身が、地域社会の支え合う力の担い手となっていく、その支援をすることだと森田さんはいいます。子どもたちやお年寄りが担い手となれると知った家族が、施設に支えられる存在から支え合う存在へと変化する。「また明日」の活動目的は、人の変化と循環を生み出すことでした。

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--------森田さん「私の信じるのは子どもたちです。ここで育ち、共生をあたりまえのことだと肌で体験して育った子どもたちが世に出たときこそ、社会は長い期間をかけて変わっていく。たんぽぽは、綿毛が種を届けたからこそ、日本中に咲くようになったんじゃないかしら。そう信じています」
 
【その2】へ続く

[取材]崖乃上ぽにょ [構成]小杉圭子

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