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おいしいおにぎりはどうやってできるのかな?
どんなおやつよりお米の好きな2歳児とその家族が、
田植え、稲刈り、脱穀、収穫祭の四つの活動に参加しました。
都立武蔵野公園近く、野川のほとり。
とんぼの飛び交う小さなたんぼの一年をお伝えします。

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◯春の田植え編
2016年5月のある気持ちのいい晴天の日、2歳になったばかりの娘を連れて田植えに参加してきました。「とんぼたんぼ」というかわいい名前の田んぼです。とんぼたんぼは、武蔵野公園内の野川のほとりにあり、週末ごとに家族でお散歩する公園から見えるので以前から気になっていました。田植えのイベントがあると掲示板で知り、この日を楽しみにしていたのです。いざ出発!

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とんぼたんぼに到着すると、ふだんは静かな田んぼにたくさんの人だかり! 後で知りましたが、この日の参加者は総勢359名。初参加だった私たち家族は、市民のみなさんの関心の高さに驚きました。子ども連れの家族も多く、幼児から小学生くらいまでの子どもたちが帽子を被り、はりきって田んぼを見つめていました。
私たち家族も受付で整理券をもらい、指定された列に並びます。参加人数がとても多いので、田植えができるまでは時間がありそうです。2歳の娘は静かに待ってなどいられそうにありません。どこで遊ばせようかと悩んでいると、受付付近になにやら水槽が。見てみると、このとんぼたんぼで捕まえたザリガニや小さな魚などの生き物が泳いでいました。下に置いてあったバケツにもザリガニがいて、娘も興味津々で覗き込んでいます。近くで見ようと、手で持ち上げてまじまじと眺める子も。
スタッフの方が、子どもたちに生き物の名前や何を食べているのかなど、詳しいことを話してくれます。生き物好きの子どもたちの目がキラキラしていました。田んぼの近くの側溝にも何やらたくさん生き物がいるらしく、子どもたちは田んぼのまわりで網やかごを持ってもう夢中。市販のおもちゃで遊んで時間を潰している子は見当たりません。子どもを惹きつける自然のありがたみを感じるひと時でした。

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そんなことをしている間に田植えの順番が回ってきました。田植えの仕方をレクチャーしてもらい、いよいよ田んぼに入ります。
先に入った人たちを見ていると、田んぼに溜まっている水がけっこう深そうです。足がズボッとはまって動けなくなっている人もチラホラ。私自身も田植えなんて小学生の時に体験して以来。ちょっと緊張しながら入ります。
まずは娘を、と抱き上げて田んぼに入れてみると……。なんと娘の長靴より水が深く、あっという間に浸水。完全装備のはずの長靴がスポッと脱げてしまいました。初めての泥の感触に驚いた娘はわーわー大泣き。さらに転びそうになり帽子も脱げ、結局田んぼの脇で見学になり、しばらく泣き顔でした。
子どもには長靴ではなく、汚れてもよい、脱げにくい運動靴がよいそうです。小さくても楽しそうに田植えをしている子どもはいたので、田んぼに入る際には装備も重要だなと痛感しました。地下足袋で安定感抜群のスタッフさん達。さすがです!

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せっかくなので大人は田植えを……と娘を夫に預け、私もいそいそと田んぼに入りました。装備は大人も同じく、長靴ではない方がよさそうです。私も身動きがとれなくなり、周りの人に引っ張ってもらいながら、へっぴり腰での田植えでした。それでも、ねとねとの泥の中にピンっと元気な苗を丁寧に植えていく作業は楽しくて、予想外にハマってしまいました。交替で夫も田植えをしました。柔らかな泥の感触は、大人に残っている子ども心を刺激するようです。娘も、田植えはできなかったけれど、そんな私たちをじっと観察しています。
終了後は家族そろって泥だらけ。でも気持ちはとっても清々しい田植え体験でした。

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◯秋の稲刈、脱穀・唐箕編
春の田植えの直後には何度か覗きに行ったけれど、しばらく田んぼのことを忘れかけていました。夏がすぎ、9月に稲刈り、翌週に脱穀と唐箕があることを知りました。自分たちの手で植えた苗が成長してお米になる瞬間をぜひとも見届けねばと、また家族そろってはりきって出かけました。

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稲刈りの日はあいにくの小雨でしたが、みな濡れながら元気に田んぼに入っています。でも田植えで泥に足を取られ大泣きしたことを覚えているのか、田んぼに入ることを断固拒否の娘。田んぼの畔で夫の稲刈りを見学です。機械に頼らず、子どもも大人も鎌を使って刈り取ります。普段持ち慣れない鎌を持つ子どもたちの手元は、見ていて冷や冷やするけれど、スタッフの方たちに上手に刈り取る術を教えてもらい、慎重に刈り取る子どもたちの目は真剣そのもの。
本物の道具を正しく使う。それを地域の人に教えてもらう機会ってなかなかありませんが、重要だなと感じました。大人がちゃんと丁寧に道具を扱い、それを教えれば、子どもたちは一生懸命その姿を見習い、慎重に扱うもの。「俺が小学生の頃は小刀を学校に持って行って鉛筆を削ったもんだよ。」と言っていた父の言葉が思い浮かびました。危ないものをただ排除するのではなく、正しい使い方を教えてあげたい。家では娘にハサミさえまだ持たせていなかった私は反省しました。
さて、稲刈りの時には田んぼから水を抜くのが一般的ですが、このとんぼたんぼでは、生き物たちがそのまま生きていけるように完全には水を抜かないそうです。そして稲刈り後にはまた水を入れ、生き物と共生している素敵な田んぼなのです。
実際、稲刈りの最中にも田んぼの中でうごめく生き物がたくさん! ウシガエルのおたまじゃくしの大きさに私もびっくり。大きいおたまじゃくしが小ぶりのザリガニを食べてしまうこともあるそうです。子どもたちも「あそこにいるよ。こっちにも!!」と指さしながら大興奮。この田んぼが多くの生き物の命を育んでいることに家族で感動しました。

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刈った後の稲はまとめて束にして、竹を麻ひもで組んだ「ハサ」という物干し竿のような所に逆さまに干します。干して1週間後に脱穀(だっこく)と唐箕(とうみ)があるそうです。その作業も楽しみです。

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稲刈りからの1週間、なかなかお日様が気持ちよく照る日がありませんでした。稲は大丈夫かなあと少し心配でしたが、脱穀(だっこく)と唐箕(とうみ)の日は雨も上がり、稲もすっかり乾いていました。

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ハサから稲束を外し、それを少しずつ木製の足踏式脱穀機にかけてモミを外していきます。この足踏式脱穀機も、私は初体験でした。足元の木の台を踏むことで、上部にある針金を埋め込んだ円筒形の部分が回転します。その円筒形の部分に稲穂の先を当てておくと、しゃらしゃらとモミだけ外れて下に落ちるという仕組みです。回転が思ったより早く、しっかり稲束を持っていないと身体ごと引き込まれそうになるほどです。でもリズムに乗ってくるとなんだか楽しい! スタッフの方が隣で次々に稲束を渡してくれるので調子が出てきて、たくさん脱穀させていただきました。

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娘もおっかなびっくり、足踏式脱穀機を踏んでみます。

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脱穀の次は唐箕。唐箕(とうみ)とは脱穀した後、一緒になって混ざっているモミがらや藁くずを選別するための、木製の四角い箱のような農具です。外側のハンドルを手回しすることで内部に風を起こし、不要な軽いモミがらと藁くずだけを風で吹き飛ばす仕組み。このハンドルは軽いので2歳の子どもでも楽しく回すことができます。ここは、一連の田んぼ作業の中でもっとも娘が関わることのできた作業でした。
歴史を感じる貴重な脱穀機と唐箕に触れ、個人的には今までで一番楽しい作業だったけれど、とても地道な作業でもあります。参加者も今までで一番少なく、スタッフの方たちがテキパキと人手が足りない部分の作業をこなしている姿が印象的でした。そんな忙しい中でも、娘を見ると、「これやってみる?」と声をかけてくれます。どんな仕組みになっているのか丁寧に説明し、最後に家族写真まで撮ってくださる笑顔の絶えない気さくな方たち。みんなでわいわい作業しながら楽しく作ったお米は、きっと美味しいごはんになることでしょう。翌月には、この活動に参加した人々の集う収穫祭があるそうです。待ち遠しくなりました。
ただ、どんなおやつよりもお米が好きな娘は、収穫祭まで待てなかったようです。落ちているモミの粒を熱心に集めて皮をむき、そのままパクリ。生米なので固いけれど、よく噛みしめるとほんのり甘くて美味しいのです。「美味しい~」とひたすら拾う娘ですが、さすがに生米なのでほどほどに……。 人がいなくなった後の田んぼでは、鳥たちがごちそうを啄むのかしらと、そんな光景を想像してほっこりした気持ちになった帰り道でした。

◯収穫祭編
 脱穀から1か月経った10月末、待ちに待った収穫祭です。肌寒いけれど、そよ風が優しく吹いて気持ちいい日でした。受付を済ませると、お土産用のお米をなんと3合もいただきました。

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収穫祭まであまり意識していなかったのですが、とんぼたんぼで作っているお米は実は3種類あります。それが、「コシヒカリ」「いのちの壱」「黒米」です。私たち家族がいただいたのは「いのちの壱」。聞き慣れないお米だったので、どんなお味か楽しみに持ち帰りました。後で知りましたが、この「いのちの壱」はなかなか手に入らない珍しい品種のお米だったようです。食べてみると風味があり、何より食感がもちもちしていて、本当に感動の美味しさでした。

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当日は、田んぼの横でスタッフさんが薪をくべながら、かまどでお米を炊いてくれています。隣の大きなお鍋では、いい匂いの漂う豚汁まで! 炊きたてホカホカのごはんは順に並んでいただきます。

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持参のお椀にラップを敷いてごはんを乗せ、用意してくださっていた何種類もの具材の中から選んでトッピング。ラップをくるんで握り、最後に美味しい海苔も巻きました。腰を下ろし、手を合わせていただきます。

外で食べるあったかいおにぎりって、どうしてこんなに美味しいのでしょうか。4回とはいえ、自分たちも田植えに携わり収穫まで見守ってきたお米だからなおさらです。周りの子どもたちもみな笑顔でパクパク。娘も小さめのおにぎり3つを夢中で完食。あったかい豚汁がまた美味しい! 寒い日だったので身体の芯からぽかぽか温まりました。

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ゆっくり座っていただいていると、なにやら素敵な音色が。この音は何? 近寄ってみると「ハンマーダルシマー」という楽器でした。木製の箱に張られた金属製の弦をばちで打って音を出すのですが、その音色が何ともいえず優しく心に響くのです。癒しの打弦楽器と表現されることもあるそうです。美味しいおにぎり片手に癒しの音色に包まれ、そしてそよ風に揺れる木の葉がサラサラ音を立てているその瞬間、大げさだけれど、「あ~こういうのが幸せって言うんだろうな~。」と心から思いました。

田んぼでの一連の体験にすっかり魅せられた私たち家族は、これを機に、とんぼたんぼを管理・運営している「野川自然の会」に入会しました。野川自然の会は、このとんぼたんぼだけでなく、小金井の野川流域で、野鳥、昆虫、植物、水生生物、水等のモニタリングや清掃など、幅広く自然に関する活動をしている団体です。
私たちが入会して初めて参加したイベントは「塩水選」というものでした。来年度の田んぼ作りに必要な稲を作る初めの初めの作業です。収穫して残しておいた種モミを塩水の中で選別して、底に沈んだ比重の大きい種モミを来年度の稲作りのために選び出すそうです。
入会してから、会員の方に田んぼの話をお聞きすると、私たちが参加したイベントが、お米作りのわずか一部にすぎないということがよく分かってきました。塩水選から始まって種モミを発芽させ、苗床作り、種まき、テントでの育苗。そしてやっと田植え……。私たちが参加できる楽しい田んぼイベントの裏側で、数多くの地道な作業を丁寧に行っている会員の方の努力がありました。

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さらに、とんぼたんぼは無農薬、無化学肥料であり、田んぼでは珍しい「生物資源型農法」を取り入れているそうです。生物資源型農法とは、田んぼに元々生息するイトミミズやバクテリア等の生き物の働きを資源として捉え、その働きによって稲づくりを行うため、耕さず、冬場も田んぼに水をはったままなのだそうです。このおかげで子どもも安心して田んぼに入ることができ、お米も美味しく安全にいただくことができるのです。
でも、生き物と共存するのはたいへん。亀やカルガモなどに稲を食べられてしまったり、ザリガニの活動で田んぼの面積が大幅に増えてしまったりという被害もあり、その都度対策を講じてきたそうです。私たちの知らない数多くの歴史と苦労があり今の田んぼがあることが分かると、いただいたお米のありがたみを改めて感じました。
日本の児童文学作家である今西祐行氏の著書に、『おいしいおにぎりをたべるには』という絵本があります。お腹を空かせた狼が山から下りてきたところ、一人のお百姓さんがおにぎりを食べています。1つもらった狼はその美味しさに驚き、お百姓さんに作り方を尋ねます。お百姓さんは種まきから精米、そしてお米の炊き方まで丁寧に教えます。それを聞いた狼は、人間が作物に手をかけているのに舌を巻き、そんなことはやっちゃいられないとがっかりして山に戻っていくというお話です。
毎日何気なくいただいているお米ですが、こんなに多くの手をかけないと食べられない、そんなことを子どもたちにはちゃんと伝えていきたいなと思いました。そして何よりも娘には、来年度は会員として田んぼに関するより多くの作業に参加し、お米のできる過程を、身をもって体験してもらいたいと思っています。そして日々の食事に対して自然と感謝の気持ちを持てる子になってくれたら嬉しいです。私たち親も知らないことばかりのお米作り。来年度は家族で会員として活動に参加させていただけることを楽しみにしています。
 
■小金井田んぼ日記
野川の調節池の自然再生地区にある田んぼのブログ。
http://blogs.yahoo.co.jp/nogawatanbo
 
■野川自然の会
http://outdoor.geocities.jp/nogawanature/

[取材・文]松山映都子
[写真提供]野川自然の会
[構成]のびのびーの!編集チーム

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