Vol.12 of 小金井子育て・子育ち支援サイト「のびのびーの!」

titlelogo.jpg

header_white.png
| はじめまして| このサイトについて | プライバシーポリシー| サイトマップ | お問い合わせ |  

tbar_01.jpg

kage_01.jpg

HOME > のびのびっコラム > Vol.12

【Vol.12】
子育て、はじめました! 〜「子育て」は「親育ち」〜

正木賢一

 「もうすぐですよ」と助産師さんに言われ、どれほど時間が経ったのか。分娩室につづく廊下をあいかわらず行ったり来たりしている。今日ほど一分一秒がとてつもなく長いと感じたことはなかった。はじめて味わう緊張感とは裏腹に、病室の窓から見える長閑な初夏の青空は、夕暮れ色に染まりかけようとしていた。交互に高まる期待と不安。気持ちを落ち着けようと椅子に腰掛けて時計の秒針を目で追っている。ついさっきまで耳にしていた心音計からの鼓動が、小さくこだましながら蘇ってきた。どうやら分娩室では〈序・破〉を終えて〈急〉にさしかかり、テキパキ動き回る助産師さんの足音から「いよいよだぞ」という空気が伝わってくる。ときおり聞こえていた妻の力んだ唸り声もすーっと薄れて、一瞬あたりに静寂がおとずれた。思わず息をのむ。と次の瞬間…「オン、ギャー!」鮮烈な産声が廊下に響き渡った。よくあるテレビドラマの出産シーンとは異なり、はじめて聞くその生音は力強い息吹に満ちていた。2012年7月11日、午後6時5分、妻が男の子を出産。おそろおそろ我が子に近づく。そんな私を出むかえてくれたのは、涙で一杯になったまぶたを懸命にあけてみせようとする最高のしかめっ面だった。ゆっくり手をさしのべると、驚くほどに小さくしわくちゃな手が私の親指をギュッと握りしめてくれた。指先から伝わる柔らかな体温を受けとめながら「さあ、新しい生活がはじまるんだ!」そう何度も心の中でさけんでいた。(@社会福祉法人聖ヨハネ会 桜町病院)
novicolumn_012_1.png
 のっけから私ごとで恐縮です。昨年の夏、アラフォー終盤で一児の親となりました。あの日に味わった人生最高の緊張と感動は今もなお鮮明に残っています。忘れないようどこかに書きとめておかなければ!そんな衝動からでしょうか、ついつい意気込んでしまい、こんな書き出しになった訳です。おまけに恥も外聞もないチョー私的な内容によって、すでに指定された文字数の半分近くを費やしてしまう始末、どうかお許しください。
 さて、気を取り直して「のびのびっコラム!」といきたいところですが…。残念ながら私は、これまで登場された先生方のように優れた知見を持ち合わせておりません。そこで、ここは誠に勝手ながら「子育て、はじめました日記!」で引き続きご勘弁を。
novicolumn_012_2.png
 おかげさまで、もうすぐ10ヵ月をむかえます。我が子がどんどん変化していく驚きとともに、父親になったんだ!という実感も日に日に増してきました。7ヵ月ごろですが、ときおり妻と私の食事風景をチラチラ見ながら口をモグモグするようになったので離乳食をはじめてみました。スプーンでお粥を口元に持っていくと、すぐさまパッと口をあけたのでビックリ!「食う、寝る、遊ぶ」の本能を垣間見た気がします。その時はまだ歯が生えていなかったので(4月になると下の歯が2本しっかりと顔を出しました)鯉のようにパクパクしながら飲み込む感じで完食。無事、離乳食デビューを果たしました。今後はアレルギー等の問題が気になるところですが、とにかく好き嫌いなく「食」を楽しめるようになって欲しいと願うばかりです。
 休日の「お風呂」と「おむつ替え」は、私の担当です(というと、気が向いた時だけね!と妻に突っ込まれそう…)。出産前の沐浴教室では、優秀!と褒められましたが、いざ本番になると全く勝手が違います。人形と生身の人間とでは当然といえば当然ですが…。片手で頭と首を支えながら、もう一方の手で柔らかい肌を傷つけまいとカーゼで洗い流す、これが案外一苦労。しかも丁寧に拭いてあげないと、輪ゴムを巻いてできた跡のようなお肉の隙間に汚れが溜まってしまうんですね。そして最大の難関は背中とお尻。顔がお湯の中に浸からないよう十分に注意して、仰向けからうつ伏せにかえる瞬間はドキドキものです。幸いにもお湯を嫌がって泣き出すことは一度もありませんでしたが、一通りの行程を終えると腰がガクガクになります。
 3ヵ月を過ぎたころには、すっかり沐浴も板についてきました。また首も据わりはじめたので一緒にバスタイムを楽しむ余裕も出てきました。首もとを軽く支えるだけで湯船にぷかぷかと浮かぶ気持ち良さそうな我が子。きっと、自分の親もこんな姿(産まれたばかりの私)を微笑ましく眺めていたことでしょう(そう願いたい)。親子のつながりって何とも不思議!お風呂場で、そんな感覚に襲われるのは、私だけでしょうか?
novicolumn_012_4.png
 おむつ替えは、アクシデント多発!!「おしっこビーム」と「うんち爆弾」には要注意です。頻繁に替えている妻より先にビームを浴びたのは私の方でした。何食わぬ表情を浮かべながら図ったようなタイミングで勢いよくシャーっとします。父ちゃんは、たまにしか替えてくれない!と文句を放つように。さらに手強いのがうんち爆弾。オナラ・ニオイ警報を逃してしまうと一大事!おむつから激しく漏れ出します。片手で両足を持ち上げながら、べっとりついたお尻の汚れをきれいに拭き取って、周囲を汚さないように新しいおむつをセットする。近ごろは脚力もついてきたので処理中にバタバタされると、もうお手上げです。替えたその場で再び爆発!ってことも結構あるのよ…と嘆く妻、心より同情いたします。そうはいうものの、今の子育ては「紙おむつ」や「ウェットティッシュ」といった文明の利器に随分と助けられている気がします。実家の母から苦労話を聞くとなおさらです。私たちのころは、御湿(布おむつ)だったから連日ベランダや室内が洗濯物で一杯だったわ。本当に大変だったのよ!
 そういえば、今まであまり気にならなかった「おむつのCM」にも消費者の目を向けるようになりました。確かにどのCMにもかわいいモデルの赤ちゃんが登場して「商品の快適さ」を伝えてくれます。しかし、肌触りはどうだ?ギャザーの構造は?どんな絵柄がついているのか?もちろん値段のことも…子育て真っ最中の親にとっては、ユーザーの声が気になるところでしょう。やはり現代は「AISAS(註1)時代」、インフォマーシャル(註2)が重要なんですね(ちょっとでも専門的な話に触れることができてよかった!ただ、子育てとは関係ありませんが ^^; )。
 そこで、どんなおむつが売れ筋なのかインターネットで調べてみました。すると、最近は「布おむつ」がファッショナブルな上に、肌に良いとかエコだったりと再評価されているようです。中には紙おむつとうまく併用する人も増えているとのこと。勉強になります。「おむつ」ひとつとっても、実に多くの親たちが有益な情報を求めて日夜ネット上で意見交換をしてるんですね。まさに「子育ての情報化」。我が子のために試行錯誤と創意工夫を惜しまない。何だか「子育て」は「親育ち」、そう実感しました。
novicolumn_012_3.png
 よく周囲からは、子育ては楽しいですよね?と聞かれます。はい、確かに楽しい!ですが、できれば「ぐずり・夜泣き」は避けたい苦労の種ですね。数時間ごとに起こされる妻は本当に気の毒だと思います。寒い冬の明け方なんかは、もう勘弁してくださいって感じです。でも、赤ちゃんは「泣くのが商売」。当たり前だけど、それしか意思表示できない訳ですからね。どこか具合が悪いのかな?怖い夢でも見たのかな?言葉が通じない不自由さを思うと、眠くてしんどい体にむち打ってギャン泣きする我が子を抱きかかえるしか術はありません。そう、これでいいんだよ!と言わんばかりにニコッとされるとすべてがご破算。なんて商売上手なんだ!そう感心しているのも束の間、今度はスヤスヤと寝息をたてはじめます。さあ、ベットに戻して自分も横になろう…しかし、そうは問屋が卸さない。必ずと言っていいほど、横にした瞬間に再び泣き出すんですよね、これが。でも、そんなやりとりが心地よい疲労感とともに「子育ての充実感」をもたらしてくれることも確かなんです。
 先々月あたりから「絵本の読み聞かせ」をはじめてみました。私は大学で「絵本表現」の研究に取り組んでいますが、実のところ「赤ちゃん絵本」は未知なる領域でした。どの程度、赤ちゃんは絵本を楽しんでいるのだろう?そんな疑問も湧いてきます。手はじめに超ロングセラー『いない いない ばあ(松谷みよ子あかちゃんの本)』を試してみました。すると、私の言葉にじっと耳を傾けて(そう思えるような仕草で)、ページをめくるたびに「アッ、ダー、バッ」といったいわゆる喃語を発しながら、絵を触ろうと興味深く手をのばします。何度やっても飽きずに笑い声をあげたり、ときには真剣な表情を浮かべたりと、確かに絵本を楽しんでいます(少なくとも私にはそう感じました)!これは大きな収穫でした。と同時に、読み聞かせは大人にとっても大変意義のあることだと実感できました。事実、読み聞かせをすることによって子ども以上に親の脳が活性化しているという実験報告もあります。今日はどんな反応をするだろう?!と期待しながら、声のトーンや読むスピードを変えてみたり。この「ワクワク感」が子育てを「クリエイティブ」なものにしてくれるんでしょうね。
novicolumn_012_5.png
 東日本大震災から2年。広がっていく放射能の問題。誰もがこの時期の子育てに一抹の不安を感じざるを得ないことでしょう。実際に子育てをはじめたことによって、事の深刻さにあらためて気づかされました。「未来に責任を持って子育てに励め」という大きな試練が与えられたんだ、そう私自身は受け止めています。肌のぬくもり、おしっこやうんち、泣き声、そして笑顔。「子育て」は鈍った大人の五感を容赦なく刺激してくれます。さらに「子どもたちの未来」を考えることは、私たち大人を元気にしてくれる「希望の源」ともいえます。そこで、まだ言葉を十分に交わすことのできない我が子とは「交感条件」を交わすことにしました。「子育て」は「親育ち」。笑顔の決して絶えることのない未来を求めて、この初心をいつまでも忘れずにいたいと思います。親バカよろしく、とりとめのない話に最後までおつきあいいただき本当にありがとうございました。

(註1)AISAS :ネット社会における購買行動のプロセスモデルを示したもの。Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動、購入)→Share(商品評価の共有)の頭文字による。AIDMA[Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)]と比較されることが多い。
(註2)インフォマーシャル:インフォメーション (information) とコマーシャル (commercial) を合わせた造語。商品やサービスの信頼を高めるために、品質の実証実験やユーザーの体験談を盛り込んだコマーシャルメッセージのひとつ。

正木賢一
東京学芸大学 芸術・スポーツ科学系 美術・書道講座 准教授。
グラフィックデザインを主軸に、絵本・キャラクター・ウェブ・映像・広告など多岐にわたり「メディア表現」の教育・研究活動をしています。また、NPO東京学芸大こども未来研究所の理事として「こどモード」活動に参画しながら、「あそび」と「まなび」をつなげるコンテンツづくりにも取り組んでいます。
[研究室ウェブサイト]http://www.u-gakugei.ac.jp/~kenichi/

01hajimete_babo.jpg01hajimete_babo.jpgmainbo_white.jpg02soudan_babo.jpg02soudan_babo.jpgmainbo_white.jpg03wa_babo.jpg03wa_babo.jpg