Vol.10 of 小金井子育て・子育ち支援サイト「のびのびーの!」

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【Vol.10】
「豊かな体験」って何でしょう?

杉森伸吉

 こどもたちには豊かな体験が必要だ,とよく見聞きします。「豊かな体験」って何でしょう?心が豊かになる体験?さまざまな喜怒哀楽が経験できる体験?ちなみに文科省は,「豊かな体験活動推進指定校」として,全国の小中学校1,000校あまりの活動をサポートしてきましたが,そのときは,体験活動を7つのジャンルに分けていました。
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 それは,①地域間交流(異なる地域の子ども同士で交流して仲良くなること。学校の統廃合が進む地方では,別々の学校から来る子どもどうしが,仲良くできるための工夫をしないと,けんかしてしまったり,うまくまとまらなかったりするので,こういう活動を通して仲良くなっていると,統合されたときにもスムーズです。また,こうした配慮だけでなく,異なる地域の人々は,文化も異なりますので,少しずつ文化の異なる人々と,仲良くなることを学ぶための活動でもあります。),②命の体験(動植物や人間の,生命の尊厳を学ぶ体験。ひいては,自分や身近な人の生命を大切にすることにもつながります。),③宿泊体験(集団で数日間宿泊して,生活を共にしたり,一般人の民家に宿泊する「民泊」をして,地元の人々と交流したりして,豊かな人間性,コミュニケーション能力を高める。),④漁業体験(普段食べている魚が,どのようにしてとれるのか,などを,実際に自分たちでも漁をして学ぶ体験。地元の漁師さんや子どもたちとふれあう機会にもなります。),⑤農業体験(普段食べているお米や野菜,果物が,どんな風にしてできるのか,どんな苦労があるのか,などを学ぶ体験),⑥林業体験(森林資源の管理と活用の実際を体験することで,山林の文化について学ぶ体験),⑦職場体験(さまざまな仕事の現場を見ることで,自分の将来を考えることにもつながります。中学2年生が,平日5日間くらいで体験することが多い。職場の内側を知ることで,既存のイメージが置きかえられる感動もあります。親子の会話が広がったり,働いてくれている保護者への尊敬の念を,子どもたちが高めたりする機会にもなります。)の7つです。これらの分類は,「人が人として仲間や自分を大切にしながら,世の中の仕組みをよく理解して,よりよい社会人になるための準備教育としての体験活動」という観点からなされていると考えてもいいでしょう。これら7種類の分類以外にも,自然体験,生活体験,芸術体験,スポーツ体験,科学体験,ものづくり体験,宿泊体験,国際理解体験,などの分け方もあります。
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 なぜ豊かな体験が必要なのでしょう?みなさんは,お子さんに,どんな体験を与えたいと思われているでしょう?上にあげたさまざまな体験を,すべてきちんと与えるのは,とても大変そうです(実際には,意外に簡単にできるのかもしれませんが)。では,どんなエッセンスを,体験から学べれば,豊かな体験ができたと言えるのでしょう。わたしは,「文字や映像だけでは学べない,人間の五感を通して総合的にとらえないと理解できないような,ホンモノを体験することを通じて,自分自身や身近なコミュニティから広い社会にいたるまでの,さまざまなつながりを理解し,想定の範囲外のことにも柔軟に対応できる勘の良さを培うこと」が大事なのではないかと思っています。こういう能力のある人なら大人になっても,しっかりと自分の足で立って,うまく生きていくことができそうです。実際,国立青少年教育振興機構(文部科学省の機関。体験活動の総本山のようなところです。小田急線参宮橋駅の近くの,国立オリンピック記念青少年総合センターや,全国にある独立行政法人国立青少年交流の家,国立青少年自然の家を統括しています)の調査では,子ども時代の体験が豊富な大人ほど,最終学歴が高く,現在の年収が高く(年収500万円以上の人は,体験量が少ない群で23%,多い群で33%。年収250万円未満の人は,体験が少ない群で40%,多い群で30%でした。),一ヶ月に読む本の冊数も多い(月に3冊以上読むのは,体験が多い群で34%,少ない群で18%,ほとんど読まない人は,多い群で30%,少ない群で50%でした。),などの傾向があることがわかっています(http://www.niye.go.jp/files/items/307/File/taikenpamphlet.pdf)。また,ちょっと宣伝になりますが,私の勤めている大学の附属学校園(幼稚園から高校まで13校園あります)では,体験活動の充実に,非常に力を入れています。
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 豊かな体験が必要ないっぽうで,しなくてよい体験や,してはいけない体験もあるでしょう。ときには,保護者が考える,しなくてよい体験,してはいけない体験が,こどもたちには,したい体験,したほうが良い体験だった,ということもあるでしょう。とくに,保護者から見て,勉強に差し支えるのではないか,失敗して苦しむのではないか,悪い子になるのではないか,などの懸念があると,なかなか体験させる気になれないでしょう。本来は,こどもたちに十分な時間や空間(遊び場や豊かな自然環境),仲間などがあれば,子どもたちなりに,さまざまな体験をすることが可能です。とくに,自由遊びをする中で,仲間関係の形成は促進されていきます。また,子どもはもともと混沌としていて,猥雑で,未熟で,傲慢な,感受性の鋭い存在です。ですので,大人から見てバカげたことやくだらないこと,無駄なこともたくさんしますが,実際にはその中から,たくさんの貴重な学びをしていることも多く,そういう価値が低そうな活動の中から,どんな学びをしているのか,きちんと見取ったうえで,いい部分を伸ばし,悪い部分を良くするような働きかけができる大人でありたいと思っています。

杉森伸吉
東京学芸大学 総合教育科学系 教育心理学講座 教授。
専門は,社会心理学・集団心理学。個人と集団の関わりについて,文化的な面も考えながら研究しています。いじめの研究や,集団宿泊体験,生活体験,学校行事の効果測定なども研究しています。
趣味は,卓球とにん肉味噌づくりです。

*下記のサイトでいじめに関する記事や論文を発表しています(リンクをクリックするとページに飛びます)
●nippon.com|日本情報他言語発信サイト 「日本型」いじめの構造を考える
http://www.nippon.com/ja/currents/d00054/
●CRN 子どもは未来である 【いじめの構造】第1回いじめの定義と変化
http://www.blog.crn.or.jp/report/02/143.html

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