Vol.5 of 小金井子育て・子育ち支援サイト「のびのびーの!」

titlelogo.jpg

header_white.png
| はじめまして| このサイトについて | プライバシーポリシー| サイトマップ | お問い合わせ |  

tbar_01.jpg

kage_01.jpg

HOME > のびのびっコラム > Vol.5

【Vol.5】
幼児期の発達と「運動遊び」

吉田伊津美

ようやく秋らしく過ごしやすい季節になってきました。今年はオリンピックが行なわれたこともあり、運動会に向けて子どもたちの士気も一層高まっているのではないでしょうか。
 子どもの体力についてはずいぶん前からその低下が指摘されています。毎年、体育の日の頃になると、子どもの体力運動能力調査の結果が報道されます。これは1964年以降、文部科学省が毎年行っている調査の結果を受けているのですが、対象となっているのは小学生以上の子どもです。では、就学前の幼児についてはどうなのでしょうか。幼児を対象とした国レベルの調査は行われていませんが経年的に行われている全国規模の調査をみると、小学生にみられる状況とまったく同じような低下傾向がみられています。つまり子どもの体力運動能力低下はすでに幼児期から始まっている問題なのです。
novicolum_005_1.png
 このような現状を受け今年3月、文部科学省は「幼児期運動指針」を策定、幼児期の運動のあり方を示しました。運動能力が低下した背景には直接的には子どもの運動経験が関係しています。外で遊んだり体を使って遊ぶ機会が以前に比べて減少したことが大きな要因としてあげられます。しかし遊びだけではなく、日常の生活の中で体を動かす機会や習慣がなくなってきていることも関係しているのです。徒歩通園をしている幼児はそうでない幼児よりも運動能力が高いという研究もあります。
 便利で快適な生活をおくれることはとてもありがたいことです。でもその陰で失われているものがあることにも気づくことも必要ではないでしょうか。たとえば水道の蛇口はかつては手でつかんでひねっていました。それが今はレバーの上下や手をかざすだけで自動的に水が出てきます。ドアも同じです。自動であればノブをひねって押したり引いたりすることはなくなります。エレベーターやエスカレーターでは、昇ったり降りたりの動作をすることなく移動が可能です。入園当初に蛇口の前で手を伸ばして待っている幼児や階段を一段ずつ足をそろえなければ降りられない年長児もいます。以前は、生活の中で当たり前のように体を使って行っていたことが、自動化機械化の中でなくなってきています。その結果、かつては当たり前のように出来ていたことが出来なかったり、ぎこちなかったりする幼児が多くなっているのです。
novicolum_005_3.png
 ヒトは動く生き物です。動かないことは一日もありません。動きはスポーツ活動だけに必要なのではなく、生涯にわたってヒトの生活からは切っても切り離せないものです。でも、動きはその経験がなければ身につきません。1歳頃に歩くようになるといっても、その年齢になれば誰でもスムーズに歩けるかというとそうではありません。自転車だって一回で乗れる人はいません。何度も繰り返して乗れるようになるのです。極端な言い方をすれば経験したことのない動きは身につきません(厳密にはそうではないのですが)。したがって、いろいろな動きの経験こそが必要なのです。
 幼児期は動きが身につきやすいという発達特性があります。この時期にいろいろな動きの経験をしておくことがとても重要です。いろいろな動きの経験はどのようにすればよいのでしょうか。それは、いろいろな遊びをたくさんすること、そしてもうひとつは日常の身体活動を豊かにすることです。いろいろな遊びをたくさんするということは、走ったり、跳んだり、投げたり、跳び下りたり、押したり、転がったりなどのいろいろな動きが無理なく豊富に経験できるということです。そして経験することでそういった多様な動きがおのずと身につけられるのです。スポーツ教室での運動は、その種目に特化しているのでその運動は上手になりますが、その運動で経験していない動きは身につきません。
 このように幼児期には運動を「遊びとして」行うことが大切なのですが、このことについて興味深い研究があります。体操やサッカーなど特別な運動指導をたくさん行っている園よりも、子どもの主体性を尊重し興味に基づいた遊びを中心に行っている園の方が幼児の運動能力が高いのです。さらに後者の園の幼児の方が積極的で社交的、がまん強いなど行動傾向もポジティブであることが示されています。このことは、遊びとしての運動が幼児の運動発達を促すだけでなく、心も育てていることを示しています。
novicolum_005_2.png
 幼児期の運動遊びや身体活動は、運動発達だけでなく、食事や睡眠、つまり子どもの生活習慣にも大きく関係しています。昼間思いきり体を動かす機会が保障されている子どもは、お腹がすいてご飯をしっかり食べる、疲れてぐっすり眠るでしょう。幼児期は生活習慣を確立する時期でもあり、早いうちに形成された規則正しい生活リズムは、年齢を経ても継続することが報告されています。体をうごかすこと、食べること、寝ることは相互に関連しあっており、どれが欠けても乱れても健康を維持していくことはできません。
 できるだけ外遊びをしましょう!と言いたいところですが、無理をしても続きません。身近に出来そうなところから見直してみてはいかがでしょうか。自転車をやめて歩いてみる、家族でスキンシップをはかって遊んでみる、普段の生活を少しだけ見直して身体活動を豊かにすることは、大人が健康を保持していくためにも重要なことであるといえます。

吉田伊津美
東京学芸大学 総合教育科学系 教育学講座  幼児教育学分野 准教授。
幼児の運動発達、遊び、心と身体の健康についての研究と活動を行っています。
生活スタイルが変化し、遊び場がなくなるなど子どもを取り巻く環境が大きくかわっている今、心身のそだちや運動発達の視点から幼児へのかかわりを考えています。

01hajimete_babo.jpg01hajimete_babo.jpgmainbo_white.jpg02soudan_babo.jpg02soudan_babo.jpgmainbo_white.jpg03wa_babo.jpg03wa_babo.jpg