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忙しい、けど友達と話したい、中学生時代。
そこでおやじと学校が居場所を創りました。
小金井市立緑中学校「ほっと@放課後カフェ」を取材しました。

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終業の鐘がなると中学生たちがわっと出て来た。冷えきった廊下に熱気がたち昇る。みんな話したり笑ったりしながら、自分の教室へ足早に移動していく。動きながら発達する熱帯低気圧のようなエネルギー群が渦巻きながら遠ざかっていった。
 
東京の中学生は忙しい。8時に登校して15時半に授業が終わると、16時から17時半まで部活、3年生になって引退すれば塾通い。友達と約束して会おうにも、塾や部活で夜になってしまう。そのうえ大人は中学生の身の上をとても心配している。暗い道ばたで話し込む姿を見かけると心配し、繁華街で話し込む姿を見ればまた心配する。
 
放課後にはほっと一息ついて、中学生どうしで話したい。それだけのことなのだ。社会人なら同僚と焼き鳥屋や喫茶店に寄って一息つくところだが、中学生にはお金も時間もないのだった。いったいどこへいけばいいのさ。そんな中学生の居場所を学校のなかに創ったのが、小金井市立緑中学校「ほっと@放課後カフェ」だ。

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放課後の教室を借りて、机と椅子を並べる。廊下に看板を出せば、カフェ開店だ。将棋やオセロ、本やボードゲームを置いておくと、入ってきた中学生の顔がぱっと明るくなる。
 
緑中学校から要請を受けてほっと@放課後カフェを運営するのは「三小おやじの会」と緑中保護者有志。地域の大人たちだ。三小とは市立小金井第三小学校のこと。緑中に進学する卒業生も多い。

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ほっと@放課後カフェの「営業時間」は木曜16時-18時の2時間。この日はおよそ60人の中学生が入れかわり立ちかわり訪れた。
 
受験を2ヶ月後に控え、帰宅前に立ち寄る3年生。給水するかのようにお抹茶を飲み干し、部活に直行するジャージ姿の2年生。しばらく遊んでいつのまにかいなくなる1、2年生。黒板に熱心に書いていく2年生。部活に打ち込んだあと畳で放心する1年生。たった5分でいい。立ち寄れて、迎えてもらえるところがあると、どこかほっとする。

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男子も女子も、好きなテーブルで好きな人と集う。
将棋をする人、オセロをする人。このテーブルではルーレットゲーム「黒ひげ」を囲むが、だからといってゲームをやりたくてたまらない人が集まってくるわけでもない。

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たとえば「黒ひげ」ではみんなで短剣を樽の鍵穴に順番に挿していく。この人形が飛び出したら、みんな驚くだろうなあ…。

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「わあ!」
わかっちゃいるけど驚いた!
人形が飛び出すまで数分。わずかな時間でも、友達と肩を寄せ合えば、ぱっと笑顔と共感が生まれる。
 
時には「中学生に学校で飲食やゲームをさせるのはいかがなものか」というご意見をいただくこともあるという。だが放課後カフェの魅力は、中学生が思い思いに同年代の友人との関わりを持てること。地域の人の見守るなか、LINEや繁華街にはない生身の関係性に支えられ、だれもが安心してそこに居られる。大人の議論で焦点とされがちな飲み物やゲームは、ここではコミュニケーションの手段にすぎないのだが、それをいちばんよくわかっているのは中学生自身だ。

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さて、今日はJapanese dayと称して、お抹茶と日本文化を嗜める特別なカフェだ。
 
お抹茶セルフお点前コーナーでは、茶杓でお抹茶を計り入れてもらい、竹の茶筅(ちゃせん)を受け取る。みんなでしゃかしゃかするうちになんだか仲良くなれる。もちろんカフェマスターの「おやじ」「おかみ」に点ててもらいたい中学生はそうしてもらえる。
 
自分と相手の距離を、ことばや空気で目測しあってばかりの毎日は、ちょっと疲れるものだ。みんないったんまなざしを抹茶の緑に落とせば、一心になれる。茶碗を受け取ると、お抹茶はなんだかあったかい。
 
「自分でお点前なんてムリ。わかんない!」
「底に押し付けないで、浮かせるようにするんだよ」
「こう?」
茶道具をきっかけに中学生どうしで教え合う姿があった。

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ここは畳の茶室。靴を脱いで入る。

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ここでは、「三小おやじの会」のメンバー、佐久間さんがお点前をしてくれる。
 
佐久間さんは「三小おやじ」でありながら、緑中在校生の「おやじ」でもある。放課後カフェマスター参加は今年3回目。男子も女子もお点前を楽しみにしている。佐久間さんが「点てようか?」と声をかけると、振り向いた数人が、ぱっと畳に並ぶ。
 
おかみの和田さんが横からさっと介添えしてくれた。「三小おやじの会」では、おやじ同様、子どもの自由で主体的な場を支える粋な女性を「おかみ」と呼ぶそうだ。

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佐久間さんが、麦茶のジャグを茶釜に見立て、お茶を点てる。
 
風格のある佇まいだが、実は茶道歴はまだ1年。家族に奨められ、勤務する会社の茶道部に入ったのがきっかけだった。「就業後の茶道部が、私にはとてもよかったんです。仕事でいっぱいだった心が、一服のお茶でぱっと切り替わりました」。

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茶杓にお抹茶。お抹茶はイトーヨーカドー謹製。

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柄杓でお湯をとり、茶筅を手にする。

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できあがり。

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お茶はひとりひとりに丁寧にいれる。待っている間ずっと、自分が大事にされた感じがする。
 
茶道の作法は深く研ぎすまされ、流儀ごとに五百年から一千年にわたる伝統を引き継ぐ。機能的で美しく、無駄な動きはひとつもないという。井上靖の名作に「本覚坊遺文」という茶道の物語がある。戦に荒れた室町時代。戦死する前の最期の居場所が茶室だった。本覚坊の兄弟子・山上宗二は「無ではなくならん。死ではなくなる」と戦乱の世を批判し、師の千利休とともに自らも死を賭して茶を点てた。人々の命を掃き集めては捨てるように戦を続ける時の権力者・豊臣秀吉を、武力ではなく静寂で諌めた茶人たちの、強い精神性が描かれる。

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佐久間さんは中学生に少しだけ作法を伝えるが、あれこれ指図しない。茶の道や、仕事と茶道の両立についてを説くわけでもない。放課後カフェでは、茶道や日本文化も目的そのものではなく、コミュニケーションの手段だ。
 
じっさい、カフェの時間内で、おやじとおかみから中学生に働きかけるのは「ありがとう」の声がけとお点前くらいだ。「なにかためになる話をきかせてやる」「悩みを聞き出して相談にのってやる」「作法を徹底的に教え込む」などの関わり方は決してしない。

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では、なぜ現代の中学生がみんな、素直に畳に座るのかって? みなさまご承知の通り、茶道では「お抹茶とお菓子」は対となっていて、切っても切り離せない。苦い抹茶と甘い菓子。古今、人の世の対比を暗喩する茶の道の文化伝統を学ぶため、今日は僕たち私たち、座して色とりどりの金平糖をいただきます! ぱく。ぱくぱくっ!
 
「おまえら、菓子食いにきたな?」
「ん?(もぐもぐ)」
 
睨みをきかせるおやじだが、どうにも目がやさしい。

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黒板ではおやじが中学生に「日本語ってどんなことば?」と問いかける。剣の一太刀のごとく、力一杯白墨を打ち付ける中学生たち。世界のどこかに文字を刻めば、祈りが届き、なにかが変わる。そう信じられた時代が、だれしもあった。

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日本語ってどんなことば?
「一人称がたくさんある。」あるある!(おやじ&おかみ)

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「漢字覚えるのめんどくさい!!」覚えられませんしみるみる忘れていきます!(おやじ&おかみ)

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「絶対世界共通語にならない。」しかし日本語の上手な外国人多いよなあ(おやじ&おかみ)

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「回りくどい。」申し訳ない!(おやじ&おかみ)

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「いいまわしがめんどくさい!」
「言葉の受け取り方をまちがえると大変なことになる。」
きみらも苦労してるんだねえ…。(おやじ&おかみ)

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書く人もいれば、眺めている人もいる。ここも思い思い。

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この日のカフェマスターは3人。会社員のおやじ・佐久間さんがこの日カフェのために半日休暇を取得した。これを聞いて駆けつけたのが、自営業のおやじ・市川さんと、在校生保護者のおかみ・和田さん。「放課後カフェ」は、三小おやじの会に加え、卒業生や在校生の保護者、先生方、文化芸術に携わる専門家など、数多くの人々が気持ちを持ち寄りながら育ってきた。

おかみの和田さんは、2年にわたり放課後カフェに参加している。きっかけは、ある日緑中学校で配られた「カフェやります」という予告チラシだったという。配布元の三小おやじの会に知り合いはいなかったが、和田さんはチラシに書いてあったアドレスにメールをした。放課後カフェの、誰もが参加でき、自由に発言できるムードのなか、この「Japanese
day」の着想が新しく生まれた。

中学生がお茶を学ぶのは敷居が高い。だが取り組めばいろんな興味の切り口が見えてくる。加えて小金井には四季折々の文化活動があった。たとえば小金井公園では、毎年2月には、100本の梅の花が香り咲くなか野点(のだて)を楽しめる。「お茶、学校でのんだことあるよ!」という経験は、中学生が地域に出て、自分の居場所を広げ、深めていく糸口にならないだろうか。

■第14回小金井公園うめまつり
2016/2/20土曜-2/21日曜11時-15時30分。小金井公園の梅林で、茶道師範のもとだれでもお点前を楽しめる。参加費500円。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/EVENT/2016/01/21q16200.htm

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「Japanese day」をやろう。だが茶道具をどうしよう。まずはおやじと保護者が自分の茶碗を持ち寄った。すると小金井在住の茶道の先生が、公民館や子ども向けのお稽古で使っていた茶道具を快く提供してくれることに。茶碗と茶筅6客が揃った。子どもたちが文化芸術に触れる環境が、地域の力で調っていく。
 
こうして中学生へと贈られた大切な茶道具。若さゆえつい力が入り、竹製の茶筅はところどころが折れる。ときには手がすべって茶碗が割れたこともあった。だが回を重ねるにつれ、子どもたちは自分の使った茶碗を「ごちそうさま」と洗って返すようになった。そういうとき、おやじとおかみは、ぱっと中学生の目をみて、よく通る声で「ありがとう!」と喜ぶのだ。

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和田さんは、先生でも保護者でもない新しい存在『おやじ』に着目する。「『おやじ』が学校に来て、自分たち中学生と過ごす。放課後カフェはそこが大事なのではないでしょうか」。おやじが行動し、子どもを見つめることで、地域や学校に、子どもの安心できる場ができていくと、和田さんは話す。
 
カフェは保護者にとっても、子どもたちの等身大の日常を見つめられるいい機会でもあった。「保育園幼稚園、小学校、中学校と成長するに従って、学校で子どもたちの姿を見つめる機会が減ってしまいました。子どもたちの日頃の様子がわかるのが嬉しくて!」。
 
夕飯時の忙しい時間帯であっても学校に足を運び、カフェの活動を続けられるのはなぜだろう。秘訣は「三小おやじの会」ならではの、義務化しない活動スタイルにあった。そしてもうひとつ、和田さんは続ける。「こういう中学生の居場所が、ずっとあり続けてほしい。だからここに来ているんだと思います」。和田さんの心の底にも、静かな熱い思いが続いている。

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三小おやじの会では、市立小金井第三小学校の保護者だけでなく、だれでも受け容れる。子どもたちも保護者も、主体的で自由に活動しているのが特長だ。これは三小おやじの会のポリシーで、2007年の結成以来大切にしてきたことのひとつだ。

たとえば、おやじの急な仕事や、中学生の行事や定期試験で日程の都合がつかないことがある。そんなときも他の保護者が頼み込まれて身代わりとして差し向けられたりしない。さっぱり「ごめんなさい、中止です!」と宣言するだけだ。楽しみにしている中学生のためには毎週開催したいのだが、そうもいかない。もし実施の回数を優先すれば、関わる人の負担が増えて活動は形骸化し、地域活動の本質から遠ざかるばかりだろう。「おやじ」の流儀では、計画に人をあてがうのではなく、関わる人のペースにあわせて地域活動ができていく。

佐久間さんは三小学区を選んで小金井市に引っ越してきたのだが、その理由のひとつは「三小おやじの会があるから」だったという。2017年1月には、次回「全国おやじサミット」の東京開催も決まった。「おやじの会」の魅力は年々、全国的に深まっているようだ。

■三小おやじの会Facebookページ
https://www.facebook.com/koganeisanshooyaji/

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18時。学校はすっかり夜の顔だ。部活を終えた中学生が帰って行く。カフェも終わりの時間だ。

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職員室に挨拶をして撤収。本日のカフェはこれで閉店。

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放課後カフェが始まった2013年6月6日から、毎回実施日報を記録している。手慣れた様子で日報を書く佐久間さん。日報は企業人の伝統的作法のひとつ。すらすらと淀みなく書き上げる。

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「お抹茶を飲み、お菓子を食べながら、各自好きなことに没頭。生徒たちがにぎやかに思い思いの時間を過ごしているのを見るのもやはりいいものだ。」。
放課後カフェ実施日報には、この日のようすが綴られている。
 
思い思いの時間。それこそが、中学生が求め、放課後カフェが支え、おやじが守ろうとしている「人生の価値」なのだ。

[取材]小杉圭子

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